母と妹が、仕事のために、大工さんが作業をされている時間に現場に行くことがほとんどできなかったので、何かあったとしても気付いていなかっただけなのかもしれません。
そして私も、現場から足が遠のいていました。
まだ一歳になるかならないかの息子の子育てが大変だったこと、そして、母と妹が私たちが住んでいたマンションの上階に仮住まいを構えたということもあったのですが。
水害に遭ったあの日から、約1年・・・。
母と妹にとって、やっと、安心して寛いで暮らせる家ができあがりました。
引渡しの日、母と妹は、確かに安堵と幸福感に満ちていました。
それでも。。。
私の中では、またしても一つの懸念ができてしまったのです。
引渡しの時にI建築さんから渡されたもの。
それは、いくつかの説明書と、家の鍵だけでした。
今以上に無知だった私にも、もらえるべきものがないことに、すぐに気がつきました。
それは・・・、保証書。
電化製品や家具にだって保証書が付いているのに、家に保証書がないなんて!
それは、私が言うべきことではなかったのかもしれません。
でも、そのときの私は、「母と妹を、実家を守らなければならない」そんな気持ちにとらわれていたのです。
I建築さんにとって、私は悪者になってもかまわない。
ただ、言いたいことを言えない、言わない母と妹に代わって、私がしっかり言わなくては!
「保証書って言うのは、もらえないんですか?」
そう問いかけた私に、I建築さんは・・・、
「アンタは、相変わらず何も分かってないね。そんなことばかり言ってると、その内相手にされなくなるよ!最近の人は、なんかことあることに、やれ契約書だ、見積りだ、保証書だって言うけど、そんなただの紙切れがなんだって言うんだ!世の中って言うのは、契約じゃなくって、義理と人情で動いてるの。紙切れ一枚で、10年だけ保証すればいいって言うんだったら、出してやるよ。でも、そんなものより、俺の目の黒いうちは、いつでも来てやるよって言ってんの!言ってること、わかるか?どっちがトクだと思うの?」
俺の目の黒いうちは、いつでも来てやる。
この言葉は、母と妹にとっては、とても心強く、そしてありがたい言葉として聞こえていました。
目の黒いうち・・・。
それでも、その言葉を保証するものは何もありませんでした。
そして、母とそう歳のかわらないIさんの”目の黒いうち”があと何年あるのか・・・そんな疑問と不安が、いつまでも私の心の中にとどまっていました。
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